Surface environment during the Hadean (Miyazaki and Korenaga, 2022a, Nature)
要旨: マグマオーシャン時の大気は極めてCO2に富んでいた一方、その後数百億年の間にはその大半のCO2がマントルへと隔離されたと考えられる.冥王代のマントルは水分を多く含み、かつ、高マグネシウムの輝石岩で大部分が構成された可能性が高く、それによって活発な沈み込み運動が起きていたことがCO2の迅速な除去の鍵だったと、この論文で示した.
背景: ジャイアント・インパクトによって、形成直後の時点では地球型惑星の表層は溶融していたと考えられている.しかし、冥王代のジルコンからは、~43億年前には既に地表面に液体の水が存在していたことが示唆されており (Wilde et al., 2001)、冥王代の終わり頃には、地球規模の炭素循環が気候を安定化させ、現在の地球と同じような表面温度を維持していた可能性が高い (Catling & Zahnle, 2020).このように初期地球は、最初の数百億年の間に人が住める状態へと劇的な変化を経験したはずである.
高温になるほどマントルは活発に対流すると思われているが、脱水によって生じるdepleted リソスフェアの存在を考えると、マントル温度が1600℃でもプレート速度は現在と同程度にしかならないことが分かっている (Korenaga, 2011).その場合は、マグマオーシャン時に放出されたCO2の除去に15億年以上掛かってしまうが、マグマオーシャン凝固時に分化していたらその問題を回避できることが分かった.分化によって生じた高いMg#を持つ輝石はパイロライトよりも融点が高く、分化しなかった均一なマントルに比べてDLMが1/4程度薄くなる。プレート速度は~50cm/yrに達し、~200気圧のCO2が~100Myrの間に隔離できたと考えられる.
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